修行で阿暁の腹の中に入れられ暗死に勝利したコイル
しかし喜んだのもつかの間、阿暁は驚くべき相手、1万年前に飲み込み封じ込めた悪玉鬼の軍勢を出してきたのだった。
阿暁の掛け声ともに内壁から湧き出てきた悪玉鬼の軍勢
悪玉鬼の群生は瞬時にコイルの善玉力を察知し襲い掛かってきた。
鬼は軽度な鎧を身にまとい槍や剣等各々の武器を持っていた。
コイルは持てる力を全て発揮し四方八方からくる悪玉鬼を薙ぎ払った。
数時間休まず戦っていると、さすがに バテてくる。
いつまでこんな戦いを続けなきゃいけないんだと永遠に終わりそうもない悪玉兵の群れを薙ぎ払っていた。
そうこうしていると軍勢の群れの中には特質している強い悪玉鬼も存在しており恐らくその群れの百人隊長や千人隊長クラスの鬼と思われた。
何とか、千人隊長を始末してもまた軍勢がわらわら襲い掛かってくるのだ。
しばらく戦っているとまた千人隊長・・いやそんなレベルの悪玉鬼ではない鬼が現れた。
その鬼は他の鬼とは違い首に毛皮のようなものを巻き、赤い鎧を身にまとい黒い髪
目つき鋭く纏う力は今までの鬼とは比べ物にならないくらいの強さだった。
剣を交わすたびに、自分の力不足を痛感する。
これは単純に今までの軍勢との戦いによる消耗だけの問題ではなく、フルパワーだったとしても敵う相手ではなかった。
こんなとんでもない悪玉鬼を雑魚もろとも封印してしまう金剛太夫って一体・・・
そう思った矢先その鬼がしゃべりだした。
「あの金色の男はどこだ!!そしてここはどこなんだ!」
コイルは金色の男は金剛太夫だとすぐ気づいた。
「えーっと・・・その探してる人の中なんだけど・・・」
どうやら鬼は無限孔に封じられて1万年たった今でも状況がわかっていないらしい。
「探してるやつの中?貴様ト・・トンチか!!
まぁいい、貴様のような雑魚と戦っていても始まらない。
我が多くの軍勢を葬り去る力、金色の男と思い飛んできてみたらとんだ見当違いだった
もう遊びは終わりだ小僧!死ぬがいい。」
そういうとその鬼は涼しい顔で刀を振った。
そこから放たれる一閃の力はコイルの目に捕らえた時には既にコイルが避けられない距離まで来ていた。
終わった。コイルがそう思った瞬間。
意識が白になり途絶えた。
赤鎧の鬼は突然目の前で起こった出来事をまだ信じられないといった顔をした。
「なんだこの蠢く地面は・・・あやつはどこへ。消えたわけではないのかこの蠢く地面に飲まれたのか・・・?」
赤鎧の悪玉鬼はこの不思議な現象に困惑し辺りをきょろきょろしてコイルの行方を捜している。
コイルの意識はうっすらと回復していく
そして頭の中に阿暁の声が響き渡る
「すまんすまん!危うく命を落とさせるとこやった。すぐに回復の氣を練り込んだるさかいな。しばらくしたら全快するやろ。」
「阿暁様すみませ・・・じゃないわ!!!なんちゅう修行なんだよ!いつまでも延々悪玉鬼と戦ったかと思ったら蛮死や暗死よりもはるかに強い鬼まで出てきて!聞いてないよ!!」
「いうてないからな!」
「言え!言え!こんな死にかける事案言え!」
「いうたら修行にならんし飽きるやろ?」
「ゲームじゃないんだから飽きるとかいう問題じゃないんだよ!」
「あんなやばいやつもおったんやな。どおりで景気よく飲み込んだ時ちょっと腹が痛-なったとおもってん。まぁわいにとったらあんなもんおんなじ軍勢の一人やけどな!」
「ボキにとっては違うんだよ!!!」
「あんまり大声出すな。ちゃんと守ったったやろがい」
「あんな化け物だしてどうするんだよ!人類の破滅だよ!」
「心配すんなワイが今から秘策を伝授したろうやないか。」
「秘策??」
「お前はそもそもとんでもない器を持ってるわけや。しかも穴もふさがった。
大気や自然からエネルギーも吸収できるようになった。
いわばお前は完全無欠や。」
「完全無欠か知らないけど現に今コテンパに為す術もなく殺されかけたよ!」
「のんのんのん!今までお前は素材の味だけで勝負してるわけや。
鮮度や環境いろんな要素が整って最高の受け皿に出された最高の素材(ちから)でな
確かに最高の環境で育ってるんやからそのままでも無類の美味さや。
でもやな達人はその素材を如何に調理して最高の料理(力・技・氣)に仕上げて繰り出すもんや。わかるか?」
「さっぱり・・・・」
「それを今からわいが教えたるから」
そういうと阿暁は縦線横線斜め線曲線鎖線ジグザグ線様々な軌道には全て性質があると語りだした。
しかもそれには武器によっても違うらしい。
自分で一番なじむ線の性質を読み解き、氣や技で手を加えるとその素材のおいしさが数倍にも膨れ上がる。
むしろしょうもない素材(ちから)も技量が上がればとんでもない力の技に仕上がる。
地玉人は基本氣を扱うのが不得意や、稀に少しだけ扱えるやつもおるがな
でもそんな地玉人でもこの技量を修行で極め悪玉鬼と渡り合えるやつもおる。
まずは自分が一番得意とする剣筋から性質を読み解くのが一番手っ取り早い
あとはそこと対となる線を解いていき、理解出来たら技と氣で仕上げていくだけだという。
「性質というのがいまいちわからないのだけど」
「お前は得意とする剣筋を使うときにイメージするものがあるな」
「雷かな・・・」
「うむ。お前の得意の剣筋は雷の性質を持っている。ではその流れで関わっている剣筋はそれを起こすイメージに近いということや」
「じゃあの型は雨 それに対をなすは雲・・・・だからあの剣筋は雷をイメージするんだ・・なるほどわかってきたぞ」
「感がええ子や。あとはその性質の氣をうまく作り出して、まぁこれがなかなか難しいけどな、骨子としている剣筋に纏わせ様々な性質の剣筋と組み合わせる事で力と技が熟練されていくわけや」
「だんだんわかってきたけど戦いながらそれを作り上げていくなんて達人の域を超えてるよ!」
「お前の言う達人なんて所詮は凡人なんや。早くこちら側の域に来んかったら命いくつあっても足らんで。今から悪玉鬼との戦いがはじまるんやからな。まぁこの域に来てもへたくそな職人もおれば努力次第でうまくなるやつもおる
ただこれだけは言うとくぞ、この域に来たへたくそでもお前の何十倍も強い」
そう阿暁は言い切った。
それほどまでにこの技術を生かすことができなければ、この先お前は戦っていけないと案に言われているのだと
そしてコイルはただただ素材だけで勝負してた事実に落胆しつつも次なるレベルアップの技術を知ることができて自分自身に生まれて初めて可能性を感じる。
しかしその可能性はいずれ強大な力を身に着ける可能性なるとは知る由もなかった。
「さぁあとは習うより慣れろや」
「はい!」
「じゃ今から肉壁ガードを解除するさかいな!」
「いきなりまたあの激つよの鬼がいるってことはないよね阿暁様?」
「わいはな、こう見えても滅茶苦茶優しいんやで」
「だ・・・だよね」
その瞬間コイルを包んでいた肉壁が開き、無限孔の世界に触れた。
そして目の前にあの滅茶苦茶強い赤鎧の鬼がにやりと笑って立っていたのである。
どこが優しんだよ!!と心で毒づきながら、阿暁の
「探す手間省いてやったでやさしいやろ」という声がどこからか(多分肉壁から)聞こえたような気がした。
突然また現れ全回復しているコイルを赤鎧の鬼は訝しげに見つめた。
「ほう、どういうわけかこの肉壁はお前の一部なのか仲間なのか・・・それに全回復もしてるな。地形を操れ、回復までできるとはちょっと厄介だ。」
「まぁいいや!僕もやられっぱなしは癪なんでね。フル全快の調理を意識した戦い方をしなくちゃね」
コイルは今まで得意としていた剣筋に隣接する動きにもそれと関連するイメージを描きながら意識し攻撃した。
するとどうだろう一連の流れがまるで清流の流れのように無駄なく綺麗に目的の場所へ流れていくそんな感覚に襲われ、今まで得意とする動きすらをも凌駕する剣技を生み出していった。
技から大技にまで行くプロセスを大事に丁寧に無駄なくこなしていく。
今まではプロセス無し、下準備無しで大技を行っていた。
これでは、走り幅跳びで助走を付けずに飛ぶのと一緒
エビに衣をつけただけで油で揚げてないてんぷらと一緒
無理に動かしていたことで動きに制限がかかりスピードも力も細り、身体すら痛める形になっていたんだ理解できた。
そうして繰り出したコイルの剣技は赤鎧の鬼の肩を破壊した。
よろめく赤鎧の鬼はすぐさま後方にジャンプしコイルと距離を初めてとった。
「さっきとは別人か・・・一体貴様何者なんだ。得体の知れない小僧め!」
「金剛太夫第一の弟子 螺旋コイルだ!!!」
赤鎧の鬼は破壊された肩に手をやり軽くなでつけた。
するとどういうわけか一瞬にして元の肩に戻した。
「久々に骨のあるやつに出会ったな・・・我も名乗ろう。
我の名は平賀灘虹(ひらが・なんこう)だ。冥途の土産に覚えておけ。」
そういうなりお互いが力の限り飛び出した。
双方の剣技のぶつかり合いが始まった。
技のレベルは赤鎧の鬼の方に軍配は上がっている。
氣自体はコイルの方に分がある為なんとかその打ち合いを凌いでいる状況だ。
しかし段々コツをつかんできたコイルは赤鎧の鬼に少しづつ押すようになってきた。
「うははは!!!お前面白いやつよのう!!!どんどん強くなるわ。あったころが赤子なら今は少年に成長したかのようだ。」
「へっへっへっへ!段々慣れてきたぞ!お前だけならなんとかなりそうだ!!」
「馬鹿もん!!調子に乗るではないわ!私はこれでも戦いが好きでな、虫けらには興味がないが、力があるやつには手加減してでもこのせめぎ合いを楽しむようにしておるのだ。
私が本気を出したら貴様とて生きてはおらん。
しかしお前は面白いな。どんどん強くなる。確かにあと数年でわしを超える事はできるかもしれんな。」
「数年も待ってられるか!」
コイルは全神経を集中させ自分の中で最速最高の一撃を平賀にくらわそうとした。
首元に剣が届きそうな瞬間更に別の禍々しい氣がコイルに張り付いてコイルの動きを止める。
コイルは一瞬でこのまま切り込んだら自分がやられる。そう直感してその場を高速で飛びのいた。
「いつまで遊んでいるのです平賀・・・」
「蚊鷹難帝(かだか・なんてい)か、いやいやこの小僧が面白くてついな。」
「なんだその少年は・・・貴方が苦戦していると兵より伝達があった故に駆け付けたのですよ。」
青い鎧を身にまとい細く皮膚が青白く冷たさと不気味さしかない鬼が現れた。
この鬼も平賀同様底知れない力を感じさせていた。
「私が苦戦するはずなかろう。お前も戦ってみるといいこの小僧面白いぞ!叩き甲斐があるというか、こんご・・なんとかいう奴に弟子入りしてるみたいだが、もうそんなの無しにして俺の弟子にして鍛えこんでやろうかなと」
「また出たな・・・その癖が!何人の鬼を弟子にして何人の弟子を殺してきた思ってるんですか。実が熟す前に食べてしまうくせに。」
「まぁまぁ!その点こいつはどんだけ叩いてもなかなか簡単には食わせてくれんぞ!」
「ほう・・・じゃ私たちの悲願をこの小僧はかなえてくれそうなのですか?」
「悲願か・・・そうだったなすっかりそんな大事な事忘れておったわ。こいつならわしら二人で鍛え上げれば、あいつを亡き者にしてくれるかもしれん」
「わかった。一旦私と変わってください。私自身がこの少年を品定める。」
平賀ですらまだまだ敵わないコイルは蚊鷹にもかなうとは思わなかった。
しかしここでくじけてしまっては殺されて笑われてお終いなのである。
蚊鷹と言われる鬼が早速襲ってきた。
蚊鷹の無駄のない動きに敵ながら感嘆しながら、自分にそんな余裕はないとコイルは気持ちを引き締めなおした。
平賀の動きと蚊鷹の動きが全く相反する動きで、その動きに慣れていた分、合わせていくのが大変だ。
しかし真逆の動きに見える両鬼がもし同時に襲ってきたらと思うと対となす絶妙の剣技にもみえた。
コイルは平賀の剣技を少し真似て蚊鷹に応戦した瞬間、蚊鷹のほほをコイルの剣がかすれた。
「うふふふふふ平賀・・・この子は光るものがある!!!少し本気をだしますかね」
その瞬間蚊鷹の剣技がうねるようにコイルに向かって伸びてきた。
さっきの平賀の一閃レベルの攻撃
コイルは冷静に応戦しようとその剣を自身の剣で全力で受け止めた
しかし抑えられる攻撃ではなかった。
身体全身が痺れ、もう死ぬという瞬間に蚊鷹が剣を止めた。
「素晴らしい・・・私がこの子くらいの時はこんなにも強くなかった。恐ろしく才能を秘めている。天玉人なのが惜しい・・・」
一瞬地面が動いた気がしたが、コイルは自分の命がまだあることに安堵した。
「蚊鷹ずるいぞ!貴様ばかり!今度は二人がかりでこやつを鍛えようではないか!」
コイルは顔面蒼白になった。一人でも倒せないほどの鬼が二人も現れて、しかも二人同時に相手をしなければならないのかと。
「ではいくぞ小僧!この動きは悪玉鬼ならではの動き。しっかりと覚えて攻略法を見つけ出せ!!!」
コイルは聞き違いかと思ったがどうやら聞き違いではなかった。
この鬼たちは何時間もかけて二人で攻撃したり休んだり時にはコイルを手当てしたりしながら悪玉鬼の特徴や打開策などを自分に教えてくれたり技の流用性までしっかりと叩きこんでくれていた。
コイルはいつしか身体も動き反応できるまでに成長していた。
そして数日経ち平賀と蚊鷹そしてコイルの3人は真剣に時折楽しそうに修行に打ち込んでいた。
「赤鬼先生!ここはこの動きが良いと思うんですけど」
「確かになそれもいいな!でも鬼は陰湿な奴が多い!裏をかいてくるやつばかりだ」
「そうだ。コイル10手先を見越して動かねば鬼にはやられますよ。鬼はセオリーを嫌う。そして実戦は常に心理戦の駆け引きです。」
「うーん確かに青鬼先生の言う事は一利あるな」
なるほどとコイルは納得していると、怪我から完治した暗死が金剛太夫によって送られ帰ってきたようだったが、その顔はただ事ではなく、怯え震え慄いていた。
「なぜ・・・いにしえの鬼が二人も・・・ここに・・・」
「暗死!!元気になったんだね!」
「貴様が戦っているのはだれかわかっているのか・・」
「あ、知り合いだった?平賀と蚊鷹だよ」
「平賀・・・蚊鷹・・・ふざけるな炎帝魔王ヒラガ様と氷帝魔王カダカ様だと!!!!」
「なんだその名は・・・」
「下々の鬼どもがそう言ってると聞いたことがあるな。」
暗死は直ぐにわかった。
これは炎帝氷帝だと。
この悪玉力は、苦裂すべてをもってしても敵う相手ではない。
「史実によれば1万年前に金剛太夫に倒されていたとばかりに思っておりました・・・」
「1万年前・・・・ずいぶん長く寝かされておったようだな。」
「お前はどこの部隊のものです・・・・ん?その禍々しさはカエルの子か」
「水帝魔王ファベイトの一子 暗死Jにございます!」
暗死は勢いよくその場に膝真づいた。
「かえるの子ならわれらの子供も同然。楽にするがいい」
「ありがたきお言葉」
「先生たち知り合いというか暗死の親戚みたいなもんだったんだな!」
暗死は始祖であるアルファベイトと同列のこの神にも等しい二人に対してのコイルの愚行を許せず、全回復したこの身体と、全力の力を間抜け面のコイルに向けて切りかかった。
しかしその剣は激しいを音をたててコイルの胸板に添うように激しくあたりはしたが、その剣は切り裂く事はできず、剣が震え暗死の手の方にダメージを負った。
「ふふふふざけるな!!!何故ダメージが与えられない!全力の攻撃だぞ!!!」
「いやいや先生たちのえげつない攻撃に比べたら、教科書通りの攻撃でわかりやすかったよ。」
「んー数年かかると思ったけど結構数日で行けそうですね」
「暗死とやら、修行に夢中になっておったがここは一体どこなんだ」
暗死は答えた。
1万年前アニサキスの元へ復讐にやってきた金剛太夫はアニサキス以外の悪玉鬼を無限孔の力で身体の中に封じ込めアニサキス神と戦ったと。
その体の中に今も囚われているのだという事を。
「おおお・・・・本当だろうなその話・・・てことはあのくそ野郎は死んだのか???」
「糞やろう???いえですからここはその金剛太夫の腹の・・・」
「糞やろうとはアニサキスのことだ!!!」
暗死は耳を疑った。
アニサキスは悪玉界にとっては主様の次に神としてあがめられている存在。
現にこの二人の同列である父ファベイトですら死して尚、崇拝し畏怖している存在なのである。
「いえ・・・奇跡的に1万年の眠りから覚め、世に出ております。」
「ぐぉぉぉぉぉぉ!!!!」
二人の鬼は手で顔を覆いその場にうずくまった。
「父もアニサキス様も待っております。行きましょう!!ここから出ましょう!炎帝氷帝のお二人が戻って頂ければ悪玉界に強大な力が二つお戻りになるのです!」
「絶対に外にはでないぞ!」
「私もです!あんな糞やろうが蘇った場所になんてもう戻りませんよ!」
コイルと暗死は二人そろって言った。
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