「誰だお前わ・・・・」
アニサキスが振り返った先には、一人の男が立っていた。
男というよりまだ青年だ。
青年はゆらりと動いたかと思ったら、あっという間に移動してガラクの傍に来た。
「じいちゃん。大丈夫だったか?来るのが遅くなってごめんよ」
「誰だ…お前は・・・」
青年は精悍な見た目とは違い、少年のように得意げに言った。
「ズビビビ!ボキだよボキ!」
「お・・おまえ・・・コイルなのか・・大きくなったな・・・」
「そうだよじいちゃん。いや正確にはじいちゃんのもう一つの心・・真王様」
「そこまで見通せるようになったのだな・・・どんな修行すればそこまで強くなれるのだ・・・」
「じいちゃん達の教えと、金剛太夫様、そして一部の悪玉鬼達のおかげさ」
「よし・・・間に合った・・・間に合ったのだ・・・わしの最期の仕事を全うさせてくれるのだな・・」
「貴様ごときが!!!アニサキス様の邪魔をするな!!!!!!」
全開放の蛮死が突然飛び出しコイルに襲い掛かった。
コイルが切り付けられたかと思ったがそれは残像だった。
蛮死は全身が凍り付いた。
自分の背後にいるコイルに気づいて
「悪いな蛮死K、剣で止めようと思ったが動きが遅すぎるから後ろに回らせてもらった。お前の姉ちゃんの義理も果たさなきゃだから殺さないでやるよ。ちょっと眠っててくれ」
コイルは蛮死の首筋を手刀で打ち付け気を失わせた。
「さぁ真王様さっさと離れて休んでてくれ」
「いやお前に・・・今のお前に会うために私はガラクという船に乗って会いに来たのだ・・・・ガラクよ感謝する・・・」
真王はガラクに意識を戻せるくらいの力を分け与え、ガラクの身体から抜け出し真王の魂は光り輝きゆっくりコイルの身体を包みこんだ。
バチバチバチバチ!!!!!ギュワワワワワ!!!!ビュシューーーーーーーー!!!
コイルの身体は稲妻が爆発する善玉力が包み込み激しい音をたてはじめ、真王の魂は黄金の粘液のようにコイルの身体にまとわりつき、いつしか光り輝く鎧へと変貌していた。
頭の金の輪に装飾された羽が消えたかと思ったら、コイルの背中に大きな翼が生えた。
コイルに纏わりつく黄金の粘液がヌルヌル動きフワフワと光り輝き、声を響かせる。
「コイルよ。お前が頭につけていた金輪の羽の装飾はわしが真王だった頃の羽だったんじゃ」
「そうだったの・・・飾りとばかり・・・」
「天玉界が窮地になった時、まだ子供だったがお前に託した方が良いと思ってな。あの時の判断間違いではなかったわ」
「凄いよ・・・力が漲ってくる。そしてこの羽で全て均一に力をコントロールできているし、どこまでも飛んでいけそうだ!あとこの黄金の液体というかスライムというかこの模様は一体なんだ・・・」
コイルに纏わりついた光り輝く黄金の粘液は水のようにサラサラ動いたりプリンのようにプルプルしたり、水晶のように硬くなったり変化している。
そしてそのプルプルした粘液から真王の声が聞こえる。
「わしの魂と融合させた粘魂じゃ。まぁ粘菌みたいなもんじゃ」
「粘魂・・・なんだそれ!」
「これはなガラクの強さの秘密じゃ。ガラクはどんな生き物にだって姿を変え、どんな生き物にでも融合できる親和性がある。それは全てこの粘魂のおかげなのだ。」
「凄い・・・?ものなんだ・・・だから形や強度も変化しているのか・・・」
「そこにわしの力を全て練り込んでガラクから取り出してやった。」
「え!!!でもこれじっちゃんから取り出して良かったの?」
「実はガラクの中にわしが入っているこの1000年、ガラクの奇妙な力を調べ上げた。何故ここまで親和性が高いのか、変形を自在にできるのか、これはある意味敵であるなら脅威じゃ。そこでこの粘魂を見つけたわけじゃ。わしもこの生物には度肝を抜かされたわい」
「げげげ!これ生物なの!なんか急に気持ち悪くなってきた。」
「そいつは凄いぞ!但し体内に置いておくと媒体である宿主が弱り始めると悪威を出し宿主の自我を暴走させまだ悪さをするかもしらんからな。
本来は悪威など持たない生物じゃが、色々あって汚染されてしまったんじゃ
その粘魂の性質を利用してわしの力と魂を親和させた。
汚染できるなら浄化もできると思ってな。
もう浄化しておるから体内に入れても問題ないとは思うがな、経過を見てみない事にはわからん。とりあえず武具にまとわせるのが理想的というわけじゃ。」
「もし体内に入ってきたらどうなるんだよ・・・」
「悪威を出さなかったとしても、わしのエネルギーと合わさって今のお前では制御できなくなり自爆し身体は木端微塵になるかもな。まぁそれは最終手段にとっておけ」
コイルは絶対に体内に入れたくないし、最終手段にもしたくないと強く思った。
「さぁわしの意識もそろそろ消滅する。ゆけ真王を継ぐ者よ」
そして完全に真王の意識が消えたかと思ったとたん光り輝く粘魂から力が湧き出てきた。
「うわぁぁぁぁ力がみなぎってくる・・・・あの岩山一峰分くらいありそう・・あ!あの岩山の中にいた意識にアニサキスにあったら呼ぶって言ったけどどうやって呼べばいいんだよ!」
絶対的な勝利を収められると確信していたアニサキスは目の前の光景を見て憤怒した。
「やめろ・・・やめろ・・・どれだけわしをコケにしたらいいのだ天玉人わ!!!!!!!!!!」
アニサキスは全開放行い全力でコイルに襲い掛かった。
アニサキスは全力でコイルを切りつける。
黄金のプルっとした粘液は刃がコイルの身体に当たる度に金剛石のように硬くなりアニサキスの攻撃を弾き、その時の発生した衝撃波が四方にいる草木や生物山々迄にぶつかり形を変え崩れ去っていった。
「なぜだ・・・なぜおまえを斬ることができんのだぁぁぁぁ!!!!」
「すげぇ粘魂(やつ)だぜ真王様・・・。まぁ粘魂のおかげもあるが、氣を調整してるから当たる部分をちょろちょろっと硬度を上げれば常に善玉度100%で対応できるってわけよ。まぁお前にいってもわかんないか!!!」
「ぐぬぬぬぬぬ!!!!!!!」
アニサキスは悪玉力を全集中させ始めた。
「貴様だけではなくこの世界もろとも消し去っ」
斬!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!
「そんなに待ってらんないよ。ボキ」
なんとアニサキスの前にいたコイルはアニサキスがいないかのように素早く通り過ぎ、そのアニサキスは身体が真っ二つに切りつけられていた。
「がぁぁぁぁわしの身体が・・・究極の身体が・・・・」
「確かにその体は究極の身体だ。おかげでぼきも助かったしね。だからこそ色々研究したんだ」
「ななななんだとぉ・・・・ぐはぁぁぁこんな傷すぐにくっつけて修復してやるわ」
「ボキが真横にだけ斬ったと思ったの?」
「な・・・に・・・」
アニサキスの身体はまるで蜘蛛の巣が張ったかのように放射線に斬れあっという間に細切れになり地面へとボトボト音をたてて崩れ落ちた
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