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Writer's pictureゼンマイマン

25話 蛙琉ファベイト

Updated: Oct 27, 2020




ここは悪玉界中枢部 玉座のような大きな椅子に座る禍々しい存在が口を開いた。




「閻死N、憤死Oよ」



王座の前にひれ伏す二人の悪玉鬼が返事をした。

「は!!!蛙琉ファベイト(アルファベイト)様!!」




「なぜあの3人だけ行かせたのだ」



ひげの生えた大柄な悪玉鬼が少し見た目と裏腹にうろたえながら答えた。

「本来一人でも大丈夫かと・・・苦裂3人も行けば十分だと・・・でもこちらに伝達もなく勝手に行動したのはあいつらでして・・・」




蛙琉ファベイトは少し考えこみ顎をさすりながらまた口を開いた。

「今感じた力は・・・信じがたいが金剛太夫の者だ・・・」





「まさかそんな古(いにしえ)の・・・おとぎ話じゃないんですから」

ひげ面の大柄の悪玉鬼の横に並んでいた顔の半分は穏やかな顔もう半分は怒り顔の悪玉鬼が少し馬鹿馬鹿しいとにやりとしながら否定した。



蛙琉ファベイトはくすりと笑う二人を一瞥した瞬間、二人は蛇ににらまれたカエルのように動けなくなった。



「憤死よ。私の力がお前より劣っているというのか?」




「ファベイト様お許しを・・・・・・」

顔が半分穏やかと怒り顔の憤死と呼ばれた悪玉鬼が目に見えない力で締め付けられ苦しんでいる。


「閻死よ。苦裂の行動は私に報告しろと言ったな?」



「勝手な行動をとった蛮死を私が探して始末をつけますので・・・」

同じようにひげ面の大柄な閻死と呼ばれた悪玉鬼も締め付けられ命が尽き欠けそうなほど苦しんでいる。



蛙琉ファベイトの絶対的な力を前に二人の力はあらがうことができなかった。




「探す必要はない戻ってきた・・・」




3人が声の先を見つめると蛮死と弾死が帰ってきた。




「貴様ら!!!勝手な行動をとりやがって!姉上はどうした!!」





「・・・金剛太夫に捕らえられた」






「やはりか・・・蛮わかっておるなこの失態。

貴様を一瞬で塵にする事もできるのだぞ。」

蛮死は全身が凍るような感覚に襲われたがゆっくりうなずくのが精いっぱいだった。



蛙琉ファベイトという存在はこの苦裂を生み出した存在だけではなくこの悪玉界を現在統括している存在でもある。

苦裂が産まれる前は前線の悪玉鬼の将として五悪帝の一人でもあった。

大昔から悪玉鬼の中でもトップクラスの悪玉鬼として長く統括している。


しかしそんな悪玉界の大物を前にしても戻ってきた弾死はにやりとファベイトを見て笑っていた。



「弾死よ貴様の態度、反省は無しか。ならば再生しなければな」





「おおお怖いねぇ~お父上様~~」



それでも弾死は恐れる事は無くファベイトの怒りを煽った。





「恐れ多い!!!!蛙琉ファベイト様になんという口を利く!!!死にたいのか!!!」

閻死は弾死に声を荒げた。

しかし妙だ、あの慎重な弾死がファベイト様に歯向かい、ファベイト様の悪威さえもはねのけ口答えする事が可能なのかと

しかしファベイトは一瞬の迷いもなく殺す。迷いなく

決して脅しではないのだと


「死ぬがいい我が攻撃により生まれし鬼、弾死よ。」

そう言って蛙琉ファベイトは凶悪な力を指先から迸らせた。

弾死は即塵になるほどの力だったが、弾死Mは軽くその力を止めてみせた。



目を見開き驚愕する閻死憤死と蛙琉ファベイト




蛙琉ファベイトは信じられないという顔で弾死を見つめている。

「私が生み出した個体なのに私より強くなるわけがない・・・そもそもなぜ悪威が効かない」

ファベイトにとって苦裂とは虫以下の存在、それほど力の差があるがゆえに微妙な弾死の変異を見抜けなかった。





弾死は自身の身体をドンドンと叩き言った。

「その割には頑丈な体をしておる。大したものだ。お前の子は」





「何者だ貴様・・・私が悪玉鬼総裁蛙琉ファベイトと知っての狼藉か」






「カエルよ。お前いつからそんなに偉くなった。」





閻死は弾死の産まれてこの方千年以上見たこともないファベイトに対する狼藉を夢でも見ているかのように何が起こっているのか把握できず焦りながら叫んだ

「やややややめろ弾死!気でも狂ったか!!!」

苦裂達にとって創造主でもあるファベイトにそんな軽口をきくだけで万死に値する。



閻死はこれ以上ファベイトのご機嫌を損ねると自分たちも制裁される恐れがあり必死の思いで弾死の暴挙を止めようとした。





「俺がいない間に態度が大きくなったもんだ。

そうかカエルは蛇を見ると体を大きく見せて威嚇するんだったな。」





その瞬間ファベイトだけはいつもと違う弾死の正体にようやく気付いた。

この抑えきれぬ禍々しい力・・・悪威・・・

そしてはるか昔に畏怖し共に戦ったその力




「そそそそんなわけがない・・・あの方はもう1万年も前に亡くなられたはずだ・・・・あの方が生きているわけがない・・・アニサキス神が・・・





「そのアニサキスが1万年ぶりに我が根城に舞い戻ってきたぞ。カエルよ」


どろりと弾死の躰から強大な禍々しい悪玉力が鎌首をもたげた。




「おおおお・・・・この悪玉力は・・・・お懐かしゅうございますアニサキス様!!!!!

私のご無礼をどうか!どうかお許しください!!!

まずはこの命を絶ってお詫び申し上げます!!!」




苦裂の3人は絶句した。主様以外で生まれてから絶対的な存在として君臨していた蛙琉ファベイトがあんなにも小さくただの使用人のように頭を下げている姿を始めてみたからだ。

身体を乗っ取られている弾死もさぞ見たかっただろうと蛮死は思った。





「もうよい・・・貴様の子供の躰も都合よく借りておるしな不問としよう。

なかなか着心地が良いぞ。」


悪玉界の現在の最高幹部苦裂(くさき)の悪玉鬼を衣服のように語るアニサキスを見て配下たちは、全く理解できなかった。




「弾死は我が子の中でも強靭な肉体を誇る個体です。お気に入りいただけて幸いでございます。如何様にもお使いくださいませ!!」





「ふん!いつまでもこんな布切れの世話になる気はないわ。

早く自分の体を復活させねばなるまい。

金剛太夫を亡き者にしなければな。

そして我が主、蠱惑(コワク)様にもご挨拶させてもらおうか」



蛙琉ファベイトは首を横に振った。


「アニサキス様、主様は1000年前の大戦でかなり身体が傷ついてしまい、眠りについておられます。いつお目覚めになるか・・・」




「誠か!!誰がそんな目に合わせたのだ!!!!」




「真王でございます。」





「真王か・・・あいつ私が閉じ込められている間にずいぶんと力をつけたものだ。

今どこにいる?」





「恐らく、その戦いで真王は死んだかと。」




「そうか・・・ではこの怒り天玉界全てにぶつけるようにするか。」



ついに悪玉界に豪鬼アニサキスが帰ってきた。

そしてアニサキスをも敬服する蠱惑(こわく)とはいったい!!!





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