コイルは完全に岩山に同化していた。
彼はここ数日岩山へのアプローチしたが、全く吸収することはできなかった。
頭を切り替え、岩山にただただ同化するという作戦にでたのだ。
最初は無意味な作戦と思われたが時がたつにつれて、岩山の構造がわかってきた。
この岩山の鉱石を更に分析すると 、結晶構造の多くが八面体で、十二面体や六面体もある。結晶の原子に※1全力対が存在しないため、気を通さない。
※全ての力(善玉・悪玉・氣)を通す対をなす構造
そもそも力を通さないんだから力を吸い出せるはずがない。
しかし阿暁はそれを造作もなく吸い出していた。
おそらく本能でこの構造の抜け穴を理解し、そのわずかな抜け道から強大な力であとは吸い上げている。
同じことをしていては、数十年修行が更に必要になるし、修行したからと言って備えられる保証もない。
今は自分に合ったこの方法で乗り切るしかないし、これを乗り切れれば誰よりもこの岩山の力をうまく発揮できる。
んーこの力を通さない性質が厄介だ。
この岩山全て※2不対全力の原子で構成されており何とかしなければならない。
電気で言うところのゴムのような存在だ
要は力の原子を全力対にすれば力を流すことができるはずだ
この構造を見てみると3つの殻2つの軌道に分かれている。
力を流そうにも、1つの殻は力を埋められるのに2つ目の殻に入り次の軌道に進んだ時にどうしても力の流れが足りないのか、止まってしまう。
おそらく阿暁クラスの力の持ち主は経験と力でこの原子を埋めてしまえるのだろ。
いくら力業とはいえ、実力と力量が問われる方法だ。
※全ての力(善玉・悪玉・氣)を通さない対をなしてない構造
ん?待てよ・・・じゃ対にすればいいんだよな。
途中で軌道が変わった時に不対になるわけだし、そこの原子の数が足りないから不対になり力の流れが止まるのでは・・・
でも原子の数を変えたらそれはもう力ではなくなるしな・・・・
いやそもそも変えれるのか?変えて違う性質のなにかになるまで確証したのか?
もしこれ変えられてその性質が何らかの力があった場合、他の不対のものからも得ることができる。
んーやってみる価値はあるか・・・
そう考えたコイルは原子は何なのか力の原子に自分の思想を氣に練り上げて近づけることにした。
コイルの瞑想思想に広がるのは宇宙
幾千もの星々がコイルの周りを高速で動いている。
そうかこの広大な世界すらも、この無限の宇宙からすれば原子のような存在なのかもしれない。
コイルのエネルギーは原子の世界へといざなわれていった。
その瞬間突然巨大なブラックホールが現れてコイルを飲み干していく。
あれ・・・これボキ戻ってこれないくらいのヤバい状況になってるかもしれないと思ったときにはもう遅かった。
コイルが行ってしまったのは物体の同一化という高度な氣練法なのだ。
それを原子に対して行ってしまうと、その構造の多さや複雑さから現世に戻ってこられないのである。
この物体同一化の氣練法はその対象の物体の性質を身に着ける為の修行法で、仙人クラスでもできるのはその一部しかやるものはいない
何故なら、物の性質は理解できるものの戻れなくなるリスクも高く成功例も少ない
机に思想を流し込み同一化する場合、簡単な構造の机ならば一度ばらし、氣と氣で再度イメージで再構築しなければならないのである。
この修行をするものはその物を理解するために分解したり元に戻したり食べたり事前に理解を何年もかけて理解していかなければならないのである。
よってこの方法はリスクが高いだけではなく非効率なのである。
それが原子となれば同一化できることすら本来できないし試して成功した人間の話も聞いたことがない。
そもそも原子とは
ボキって偉業を成しえたのに誰にも知られることなく藻屑として消えるんだ・・・
そう絶望に襲われた瞬間
心に何者かが語りかけてきた。
「お前人間だな?わし以外に此処に来くるやつがいるとはな。しかもこの力、この純度!穴あきだろ?この純度は穴が開いて当然だ。ん?穴が開いてない!!いや!埋められている!!あったのか・・・埋める方法が・・・・おい!聞いておるか!ワッパ!」
「あなたは何もんなんだ!なぜ穴あきってわかったんだよ!」
今まで感じたこともない不思議な氣を纏った人のような物体が、自分が今物質なのか氣なのかわからないような状態にいるのに言い当ててきてただただ驚いているだけのコイル
「お前の力量と溶けるような濃さの善玉力みたらだれが見たってこれは穴が開くぞ。しかしそれを留める事ができる栓が現世ではあるんだな。ちょっと戻りたくなってきたぞ」
コイルはその不思議な見たことも無いような・・・いや感じたことのあるような氣の物体に恐る恐る聞いた。
「あなたも現世の人間だったんですか?」
「そうだわしもお前と同じ穴あきだ。とりあえずお前このまま居たら原子決壊して消滅するぞ。自分の周りに早く守りの原子を作りだせ。」
「守りの原子??それどうやって作るんだよ!」
「守りの原子というのはこの空間は原子の掃除機みたいな場所でもありすべてを無機物にしてしまう場所だ。無機物にされないように自分の意識の周りに守りの分子を作り続けないと無機物にされて、現世に二度と戻ることはできない。」
確かにさっきから原子の存在が崩れ去っている感覚だけはある。
「げ!!!わわわわかったよ!守りの原子の作り方教えてよ!!」
「まぁお前の意識もそろそろ限界っぽいから教えてやろう。守りと言ってもただ原子を作り出すだけだ。」
「・・・・だからその原子の作り方を聞いてるんだよ!!!え!!!原子作り出せるの!」
「原子を思い浮かべてお前のその濃い善玉力で疑似原子を作り出すんだよ。力が濃ければ濃いほどいいぞ。濃度の濃い力は原子構造と限りなく等しいから長持ちする」
「本当かよ・・・ふんふんふん」
コイルは頭の中で力を限りなく原子構造偽て作成した。
コイルの潜在式の周りには原子がたちまち出来上がった。
「なかなか難しいけど、できなくもない凄いや」
そう思った矢先さっき苦労して作った原子が砂のように散っていった。
「この空間は弱い原子から壊していく性質があるのを利用して身も守れることにこのわしが気づき編み出したんだ。こうする事で本来の原子は何故か壊されない。擬似原子が外殻のような役割を果たし守っている感じか」
「すげーや・・・あんた何者なんだよ!」
「いつか現世で会える時が来るかもしれんな。わしもこの空間に一度捕らわれた身・・・今や引きこもりの身か!いつしか現世に意識を戻そうという気力がお前にあえたおかげで出てきたわ」
「え・・・あんたまだ現世に存在するなんかなの・・・いよいよ何もんなんだ!!」
「わしは数百年かけてここから出る力を蓄えては、出ようと思ってはいるのだが、出てもやる事ないしやーめたと力を解放すること数百回。でも何か起こった時はいつでも出れるようにとまた力を貯めておった。
あんまり貯めると大変なんでな毎度3分の1は捨ててるのだが、そろそろ満タンになる。お前運が良かったな。お前に使って出してやる。」
「でもそれ使ったらあなたが戻れなくなるんじゃ?」
「大丈夫だ。3分の1あれば戻れるお前に使っても2回は戻れる。心配するな。ただこれは善意ではない」
「そうなの!けち臭いな!!!」
「穴あきをふさぐ方法を教えてくれたらということでどうだ?」
コイルは詳しくこうなったいきさつを教えた。
「なるほど・・・じゃそいつの細胞がいるか・・・そいつと対峙したときわしを呼んでくれんか?」
「そんなことならお安い御用だよ!約束する!」
「頼んだぞ。じゃほら戻れ戻れ!」
その瞬間空間がゆがみぐるぐる回転したと思ったら、また自分が岩山になっていたころの意識に戻った。
今まで見ていたものは夢だったんじゃないだろうか・・・
あれが現実ならなかなかとんでもない経験をしたものだとコイルは思った。
原子と同化して生きて帰ってきた事。原子の構想の中でまだ現世の誰かしらの思念が存在していた事。
多分どちらの事を話しても誰一人信じてくれないだろう。
ガラクや金剛太夫ですら。
自分が実際に体験したことを証明するには、原子を疑似作成する事で証明される。
それどころかこの不対全力の原子を対全力の原子を創造し構成できれば・・・
コイルはまず岩山原子構造をイメージし善玉力をなぞる様にそのイメージに這わせた。
岩山の原子構造は大原子を中心にN殻M殻L殻K殻と螺旋のような構造をしており、K殻の原子を1対にすれば表層の氣を得る事ができる。
規定の数、対にならないと全力全て通ずることはできない。
L殻ともなれば4対原子合計8個の疑似原子を構成する必要がある。
原子が受け皿に埋められていく。空いている岩山の原子の部分が埋まれば対となり力を簡単に通力させる事ができるはずだ。
まずは1個擬似原子を作り出しK殻にはめれば最初の軌道のK殻を対にできるはずだ。
善玉力を薄めず、原子の疑似物擬似原子を思い描いた。
なかなか形が定まらない。
やっぱり夢だったか・・・・
と思った矢先善玉力がみるみる原子の形に変化した。
「本当かよ・・・原子できちゃったよ。よし対になるか置いてみるか」
一つ目のK殻に細心の注意で擬似原子を殻にはめた。
ブン!
対になる音がコイルの中で響いた。
「やった!!やったよ・・・夢じゃなかったんだ・・・よしあと4対、擬似原子8個作ってL殻全て対にするぞ・・・M殻も全てするには更に9対合18個作り対にする必要が・・・それは難しそうだな・・・今からの8個擬似原子も作れるかも怪しいよ」
コイルは更にL殻(2層目)を順調に2対構成する事が出来た。
残すもう1対も意識が無くなりそうにはなったが何度か挑戦するうちに定まってきた。
K殻L殻の2殻も全て不対原子から対原子にすることができた。
その瞬間身体に衝撃のような痺れる力が流れ込んできた。
なんだこの力・・・つい最近感じたことがある・・・
そうあの原子に陥った時の意識の不思議な氣と同じだと
あの存在は・・・岩山・・・山だったのか????
人???これ以上考えたら折角の氣の巡りがおかしくなりそうだったの速やかに忘れ去り
コイルは恐れずその力を利用して自身の善玉力を親和させた。
「よかった原子を増やしてもちゃんと氣のままだ」
コイルは親和させた力を身体の60兆ほどの細胞全てに染み渡らせた。
グワングワングワングワン
コイルの躰から溢れ出る闘氣が立ち上り音が聞こえくるようだ。
「これが僕の力なのか・・・これが僕の真の力なのか」
誰にも負ける気がしない!
「M殻(3層)N殻(4層)まで原子対をいずれ作る事ができれば、僕はどれだけ強くなれるんだ。まぁその先に力があるならばの話だけど・・・ただの意味をなさない原子構造かもしれないし。
今は考えるのはやめようそもそもM殻(3層)を全て対にできる事はもう夢のまた夢のレベルなのだから。とりあえずあのおばちゃんを倒さねば!!!」
そもそもK殻(1層)の時点でコイルは今までとは比べ物にならないくらいの力が手に入った。
恐らくこの法則を使えば気を取り出しにく場所は勿論の事、氣を取り出しやすい場所であれば今までかかっていた時間短縮して大きな氣を取り出せる事もできる。
3層目のM殻をもし解放したらと思うとコイルは想像もできないくらいの力を得る事になるが、その構造や擬似原子の更なる作成は戦っていなくても作るのは相当至難の業であり、それが戦闘ともなると実戦向きではないのかもしれないとすぐ諦められるレベルである。
「岩山が数百年ぶりに氣を放出したのかと慌ててきてみたらコイルおまえやったんかい!」
回りに噴き出すとてつもない氣を感じ金剛太夫が慌てて飛んできた。
「素晴らしい・・・岩山の層にここまで浸透して氣を取り出せるなんて。私達でも無理だな阿暁。」
「だからこの岩山と勘違いしたんや。こりゃ一気に実力が昇格したな。」
「阿暁様・・・僕あのおばさん倒せそうな気がするんだ」
「ぼぼぼ僕?!お前いっつもボキ!って言うてたやないか!いうのやめたんか?」
「あれ?本当だ?僕は僕って言ってるつもりだったんだけど、いっつもボキって言っちゃってたんだけどなんでだろう?」
「変な奴や!よし、あいつもだいぶ待ちくたびれてるで、入って修行してこい。」
「今回は前みたいに数秒で殺されかけたりはしないからな!」
コイルは阿暁の腹の中にいる女悪鬼を思い出しやる気をみなぎらせた。
コイルは阿暁の口に三度自ら飛び込んだ。
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