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Writer's pictureゼンマイマン

20話 苦裂(くさき)

Updated: Oct 27, 2020




「己・・・なんだあいつらわ・・・」



金剛太夫との戦いから逃げ自身の根城に戻った蛮死Kは、悔しさと恐怖で打ち震えていた。




蛮死K(ばんしけー)が畏怖する存在は主様と蛙琉(ある)ファベイト様以外存在しなかった。

千年前地玉界でガラクが暴れている時でも容易にガラクを拘束し我の指示通り操作することもできた。



「真王ですら私は!!!私は!!!死に追いやったんだぞ!!!!」




まるでキツネにつままれたかのように古文書の戦士が突如現れ、伝えられた力以上に立ちはだかった。

蛮死は信じられなかったフルパワーで戦ったのに




「ん?そうかあいつも氣の吸収融合が限りなくうまいのか

それともあの顔色の悪い相棒がその役割を果たしているのか・・・」



なるほどなるほど見えてきたぞ!汚いやつらめ!!!心の中で悪態をつき罵り笑った。



「私がこの私がアニサキス以来の豪鬼と称された私が負けるわけがないだろう!」




「そうだよな?」


そう言って蛮死Kは部下たちに問いかけた。




部下達は恐怖で一瞬返事が遅れた。




「返事が遅い!!!!!!」



そう叫んだ瞬間右手を水平に動かしたと同時に波動が部下たちを切り刻みあっという間に数十名の悪玉鬼が消えた。



「必ずやあいつらを見つけて殺してやる。」




「偉く威勢がいいなぁ蛮死Kよ」


奥からガタイのいい悪玉鬼が出てきた。




「弾死M(だんしえむ)・・・お前まだいたのか。

早くエスライム地区を掌握しないとファベイト様にお叱りをうけるぞ。」

蛮死Kは弾死Mと呼んだガタイのいい男に告げた。



「お前が逃げ帰ってる間にもう既に掌握したわ

情けない!それでもファベイト様より生み出された苦裂(くさき)の一員なのか

お前だけはファベイト様ではなくそこら辺の(悪玉鬼)バックテリアが産んだのかもな」

弾死Mは顎をしゃくり上げて笑った。




「言ってくれる。」

蛮死Kの周りの空間は禍々しい力で大きくゆがんで見える。

それに対抗するように弾死Mも負けず劣らず禍々しい力を発していた。




「止めなさい!見苦しい!!!」



そこを割って停めてきたのが、妖艶な悪玉鬼だった。



「暗死J・・・」


暗死J(あんしじぇい)と呼ばれた妖艶な悪玉鬼はイライラしながら二人に言った。

「ここで争ったら主様の眠りを妨げるわ。

妨げたら最後ファベイト様に消さるわよ」。



「運がよかったな蛮死K

今日は機嫌がいい。領地も奪えたし、お前が敗走する間抜けな姿も観れたしな!

わははははは!!」


笑いながら弾死Mは奥の部屋へと消えていった。



「グ・・・・・!!!!」

こらえきれない蛮死は弾死を追いかけようとした。



「K!!!」

暗死が一喝した。



「わかっている。」




「我ら苦裂、任務を全うするまでは主様に全力で努めなければいけないのよ。」




「その肝心の主様があの時の大戦から全く目覚められない。

俺はあの時真王にとどめを刺されそうになった主様を救ったいわば悪玉鬼の救世主だ!

なのになんだ!ファベイト様も俺に未だこのような任務を与える・・・」




「真王は死んでないわ

完全にとどめを刺さなかったあなたの事をファベイト様は許してないのよ。」


暗死の冷たい視線が蛮死に刺さった。



「ケッ!俺も命がけだったんだ」




「それにあなたの手駒として動かせていたガラクも真王の器として利用されている。」


蛮死は1000年前の大戦で、特殊な力を持つ人間を見つけ、悪玉力を使い利用し同族同士で地玉人で殺し合わせ、統治させ裏で操る計画だった。

その特殊な力をもった人間がガラクであった。

しっかりと悪玉力で魂を縛り付けていたのに、解除されるどころか乗っ取られるとは思いもしなかった。

自分の力に慢心していたのか、蛮死は大成功を収めるはずが大失敗となったのである。



「俺が必ず始末をつける・・・

ただ不味い事になった。」




「なに?不味い事って」





「神話の怪物が現れた。」




暗死は目を見開き半笑いで言った

「神話の怪物?」




「アニサキス神を倒した。怪物だ」





「金剛太夫?うふふふふふふあはははははは!

あなた冗談言えるようになったのね。

バカ言わないで!あんな話、過去の天玉人が書いた嘘よ!」


暗死は腹を抱えて笑った。




蛮死はそんな暗死を気にもせず、真顔で言った。

「あの時いたとされるアニサキス神と1万の悪玉鬼が消えた説明はどうつけるんだ?」





暗死は笑うのを止め、一瞬沈黙したがすぐに笑顔に戻り答えた。

「だからおとぎ話だっていうのよ!

アニサキス神は1万の兵と一緒に来たる本当の大戦の為にどこかで眠りについてるに違いないわ。」




蛮死は淡々と現実を突きつけた。

「じゃ千年前の大戦、何故主様の危機に駆け付けなかったんだ?」



暗死は蛮死に顔を向け、鋭い表情で確認した。

「もし本当にそれが金剛太夫というのなら証拠があるの?」




「俺が敵わず逃げ帰った・・・・子供のようにな。」


蛮死Kは歯を食いしばり壁を拳で殴った。




蛮死の取り乱した状況から暗死は信じられない気持ちでいっぱいになった。

「バカな・・・・何かトリックがあるはずよ。

ふふふ一緒に見つけ出して血祭りにあげましょう。」




冷静を取り戻した蛮死は、暗死の言葉も一理あると思った。

「ふ・・・姉上に助太刀いただけるとは頼もしい

俺もこれはトリックだと思っていたところだよ。

あんな力があってたまるか・・・」





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