前回までのあらすじ
ガラクが送り出した天子達が迎え撃つは悪玉界の超悪玉的存在『 蛮死K 』
コイルもハルイロも全く歯が立たず殺される寸前のところで金剛太夫により命を救われる。
蛮死Kを軽くいなし撃退する金剛太夫
そしてその金剛太夫の体内で守られている二人。
金剛太夫の体内に守られる直前コイルは自爆行為でもある力の暴走でリミッターを解除してフルパワーで蛮死Kに立ち向かおうとしたものの、目の前が訳の分からぬ空間(体内)
に移動し困惑
そんなコイルの善玉の力に導かれ現れた謎の生命体は何と1万年前金剛太夫が退治して体内で殺したと思われたアニサキスのなれの果てだった。
そのなれの果てがコイルの力を吸う事でみるみる記憶と力が戻ってきてしまいそのままコイルと一緒に体内から脱出に成功させてしまったのである。
歴史上知られる最高の悪魔が世に放たれてしまった。
今後一体どうなるのかぁ!
蛮死Kと金剛太夫との戦いを終え、阿暁の口の中から吐き出されたコイルとハルイロ
ハルイロは地玉界の人間なのに善玉力を備えていると言う阿暁
これはガラクの計画が進んでいるものと意味深な発言をする中
コイルを見た阿暁が仰天?!
「純粋な善玉人やないか!」
純然な善玉人?むしろ純善じゃない善玉人が善玉界でいるのか?そう疑問に思うコイルをよそに、阿暁はこうもつぶやいた。
「お前力の使い方、どうなってるんや??」
そう阿暁はコイルに言ったのである。
解放すると手足をうまく動かすことができず自滅することもあるんだ
だからボキは手足を縛ってる方が力をうまく使えるんだ。
ばかたれ!!!そんな奴がこの世におるか!!手足縛られて全力だせます!!ってやつが。
だから我々がここに向かわされたのではないですか。
どうやらそういう事みたいやな。ガラクめ・・・面倒くさいことをわしらにやらせようっちゅう魂胆やな。
兎に角今の世界は1000年前から大きく進化を遂げてるわけや。
ある面では大きな退化でもあるが、その点お前はその退化に値しない。
しかしこの進化が無ければ多くの地玉人や天玉人さえも生き残れなかっただろう
また多くの地玉人天玉人たちが力を大きく残しながら戦士として今も生き続ける事が出来た。
そんな礎(いしずえ)を梵徳がやらかしおったんやな。
本来他界の人間と融合するのは水と油ぐらい無理な話なんや。
同界でも一部の種族を除いては一緒やけどな。
これは悠久の時代、世界そのものの理やと思わてたんや。
しかし梵徳の仙人はある日夢で自分では想像もできなかった呪文の法則に気が付いた。
最初は石と木を融合させ、丈夫でしなりがあり耐久性の高い素材を作る呪文かと思った。
しかしそうではなかった。
その呪文の親和性は素材だけではなく何にでも、つまり気体だろうが物質であろうが融合させることができた。
勿論、動植物ともすさまじい親和性を見せた。
そうすることで自分の理想の素材を作る事が出来たんやな。
梵徳はこの融合したモノを寄螟螺(キメイラ)と呼ぶことにした。
様々な植物の髄に生息する螟蟲に更に違う生物が螺旋のように寄生する何重構造で織りなす生物から名付けた。
猛獣の力を持ち鳥類の翼を持ち海獣のように大海おも自由に動ける獣を作り上げた。
しかし、中には親和しきれず溶ける者もあらわれた。
それを知ったのは病弱な息子と強靭なシルライ山の剛獣を融合させてほどなくやった。
悲しいかな息子共々親和しきれず溶けて死んでしまいおった。
梵徳はこの呪文が如何に自分勝手なものを作り出し、無責任に命を弄んでいる事に気づかされ二度と使うことはなかった。
しかしわしらが寝た9000年後の戦いで使わざる終えなかった。
天玉界の真王が肉体を失い息絶えようとしていたからだ。
梵徳は最高の素材を見つけてしまった。
そう・・・ガラクや
あいつは地玉界史上最高最悪の存在やったらしいが、能力は天玉界や悪玉界の歴史上見たことが無いくらいユニークな能力を持っていた。
生きていて害しかない人間なら、真王の魂を融合させてもいいのではないか
梵徳は何度も何度も言い聞かせ葛藤した。
しかしそう考えている間にも真王の力は細っていった。
梵徳はたとえガラクが溶けてしまっても、悪党が死ぬだけ
この世界の秩序を守ることができる。
真王には申し訳が無いが、これしかない。
そう思いガラクに近づいた。
この融合させる呪文は利き手に魂を主とさせる存在を触り、反対の手で軸となるものを触り呪文を唱え行っていく。
梵徳は尋常ではない速さでガラクの横に立ち禁断の呪文を詠唱した。
ガラクも気づいた時にはもう光に包まれ動けなくなっていた。
「悪党よ真王の器になるのだから誉なことよ!」
梵徳は細心の注意を払い親和させ最後の大事な瞬間に主となる手で触っている真王の魂とガラクの身体は何故か入れ替わった。
これではガラクが主となり真王はきっかけとなるだけになってしまう。
梵徳は慌てた。もうここまで来て発動してしまっては止める事ができない。
何が起こったのか慌てていると、心に直接真王が語りかけてきた。
真王の魂
「梵徳よ。私は生まれし時より強大な力を持っていたが、どうもこの世界を収める王では無いとずっと感じていた。阿暁にほぼほぼ勝てなかったしな。
しかし今日自分の中で腑に落ちた。私はこのガラクの力のきっかけと制御を担う為に生まれてきたのかもと。」
梵徳
「真王・・・何を何をバカなことをこの男がこの世を救う王になるわけがないではありませんか!こんな残虐な男が・・・」
「だからこそ導くのだ。本当の大戦にはまだ1000年も時間がある。十分だ。お前にも手伝ってもらえないか・・・さぁ我・・・いやガラクは新たな真王となるのだ。」
「真王ーーー!!!!」
梵徳の両手は光で包まれ爆ぜた。
「うう・・・・俺は一体・・・・」
意識を取り戻したガラクは口いっぱいに血の味を感じながら目をゆっくり開けて身体を震えながら起こした。
「さぁ・・・躾(しつけ)が終わるまではしっかり融合を楽しませてもらうぞ」
ガラクの中で真王の声が響き渡る。
「うがぁぁぁぁぁぁぁ おのれぇぇぇl!!!ぐぞぉぉぉおぉ!!!」
突然の得体のしれない声に生まれて初めてガラクはおびえた。
抵抗することもできないほどの増長された心の声が響き渡り、ガラクは声のなすがままとなった。
「お前がいくら暴れても無駄だ。私がお前を制御する力もまたお前の力なのだ。」
ガラクはもがき暴れながらも身体を巨大なドラゴンに変化させ、周りの岩山に身体をぶつけ、中の真王にダメージを与えようとしていた。
「なんと面白い能力だ!しかし、私はもうお前なのだ、細胞もすべてお前に溶け込んでおるのだ。無駄なあがきを」
ガラクは体を魚に変えて海の中へ今度は飛び込んだ。
深く深く潜り、心中すると見せかけて中の真王が逃げ出すという算段だ
「わからんやつよ。私はお前、お前もまた私なのだ。いくら深く潜っても、お前がまだ十分に肺に酸素が残り、余力を残している事もわかるのだ。」
ガラクは勢い良く海面を飛び出し怪鳥に形を変え大空へ高く高く飛び上がった。
「海の中と何が違うのだ。いい加減学習しろ」
そう思った瞬間怪鳥になったガラクは弧を描き数千メートルの上空から大地へと勢いよく急降下し始めた。
「・・・お前このまま死ぬ気だな。」
ガラクはこの得体のしれないものに取りつかれて良い様に利用されるのであればと死を選んだ。
「仕方がない。ポラーーーー!!!!!」
真王は自身の力を全身にみなぎらせた。
ガラクは絶叫し、ゆっくりと地上に降り立ち元の人の姿に戻った。
「全く無駄なのだ。貴様は死ぬことも息をする事すら私の許しがないと自由にできない。
今はな・・・
お前が悪行を行えば体は干からびる、しかし善行を行えばお前は得たことがない私の力が身体から湧き出る事だろう。」
「真王ご無事で・・・」
「うむ。梵徳よ。すまなかったこんなマネをしてしまって。」
「なぜこのような・・・」
「言ったであろう・・・私はこの世を統率できる男・・・のきっかけなのだと。」
「私も長い間生きております。いや生かされているといった方が正しいのかもしれません。しかしそれは真王ほどの天玉神の支えになる事。あなたほどの神は今後誕生するか・・・」
「天玉界ではそうかもな」
真王は少し笑ったようだが実際笑っているのは憑りついたガラクの顔。
梵徳はそんな顔を複雑な表情で見つめる。
「天玉界ではと言うのはどういう意味ですか?悪玉界にそれよりも凄いのがいると・・・?
アニサキスはもう滅び、やつらを操っていた悪玉神も真王の戦いで敗北し今は鳴りを潜めております。」
「いや全ての王となる者が他にいるという事よ」
「天玉界ではなく・・・全ての王・・・まさか今私の目の前にいる真王と融合したその男の事ですか?」
「ふ・・・こやつもまたきっかけよ」
「!!!!!」
「わしの目の前に現れた時、わしはその者を守る力となるだろう
それがいつになるやら・・・この世界の均衡が完全に崩される前に出会えるといいがな。
まずはガラクの自立支援が先ではあるが、せめてあれが手元にあればわかるんだろうがな・・・」
「 Ⅳ蜂音 (ヨハネ)ですな。」
「正直もう見たくも触りたくもない・・・」
「母上の形見ですぞ」
「あれのせいで幼少時代どれだけ襲われ、殺されかけたか。
まぁおかげで鍛えられたがな。」
「鍛えられたといえるほどのレベルではありませんよ。襲ってきているのは超悪玉的な者ばかり。私も書物でしか見たことがないやつらです。
「ぐぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!」
「ガラクめ、元気がいいようですな。さぁ行きましょう。ここはまだまだ危険な場所。善玉界に戻り体制を立て直しましょうぞ」
「ぐぐぐ・・・なかなか悍馬(かんば)な体だ。でも便利が良い。変化だけではなく、記憶している力の居場所をおおよそ探し出す力もある。
まずは9000年行方知れずの阿暁王を探しに行くぞ」
そうして梵徳はガラクを支え天玉界へ飛び去ったのであった・・・
と・・・まぁそんな経緯があったみたいや
今は真王の意思というよりガラクの意思がメインになってるわけやから、1000年の間にだいぶあいつも煩悩を捨て去りこの世界の為に色々改心してきたんやろう。
ただあいつはとんでもない地玉界の悪鬼やったという事実を忘れてはいけない。
だからお前みたいな純然たる力に普通はそそられて力を吸収しようとしたり、自分の力を親和させて自分の支配下にしてしまう可能性もあるのに、いやその魅力十分なお前に手を出さず見守り修行までし、ついには俺らに託すまで来たわけやからな。
わいらもガラクに敬意は払わないとな。
時折見せるじいちゃんの咆哮は未だ完全に悪のガラクを抑えきれていないんじゃないかとコイルは少し不安に思った。
だとすれば自分が取り込まれないように強くなるしかないし、頼れるのはもうこの目の前にいる古(いにしえ)の戦士金剛太夫しかいない。
そしていつかじいちゃんを助かる力になるんだ。
修行をつけてもらってこの恩に報いるしかない。
そう心に誓うコイルであった。
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