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  • Writer's pictureゼンマイマン

10話  肉塊

Updated: Feb 26, 2020



元は肉塊、そもそもは皇族の王だった男は草むらから大きく跳ね上がり飛翔した。

そして大きく息を吸い込み心の底から絶叫した。

口から血飛沫をまき散らしながら糸の切れた凧のように飛んだ。



アニサキスが破壊した集落には城があり愛した国民や妻子が暮らしていた。

元々戦いは好きな王ではあったが、殺生は好まなかった。

また自分の部族以外の政治(まつりごと)に関心が一切なかった。

故にいくさには一切参加することはなかった。



しかし善玉界でもたぐいまれなる力を持っていたこのカバ族の王は、歴代の武神達の何人かに戦いのいろはを叩き込み教育し代わりに善玉界を守らせた。

これは善玉真王との約束でもある。



善玉界では北の王とまで歌われていた。



そんな男が今は半身カバで半身蛇の奇妙な体に変えられた。


姿を変えられたことはもうはやどうでもいい。


愛する仲間や家族たちを殺されたことが何よりも許せなかった。

それを守れなかったふがいない自分はどんな姿に変えられようとも自業自得だ。



肉塊の名は阿暁 (あぎょう)

カバ族の王、阿暁王


元阿暁王の獣はカバ族が代々守ってきた聖地に降り立ち、その先にある洞窟に入っていった。



姿は見せず、死場は見せぬぞと言わんばかりにひっそりと洞窟で死んだかのように思えた。






それから10数年後・・・





何者かが洞窟から出てきた。

現れたのはアニサキスに攻撃を受ける前の綺麗な元通りの姿の阿暁王が入り口に立っていた。




前と違う点は

右目が鈍く光り、左手にはあの肉塊から変化したカバを持っていること。




この地域を旋回していた悪玉鬼がその姿を発見し襲い掛かってきた。

その数50体



阿暁王は襲い掛かってくる悪玉鬼を一瞥し、持っていたカバを使いあっという間に、叩き潰しミンチにした。



我は・・・我らは・・・金剛太夫


元阿暁王だった男がしゃべった



我は吽暁




手に持つカバもしゃべった。





我は阿暁





一人のようで一人にあらず。

アニサキスを塵にするまでは死ぬることはない。






やつはどこおんねん。







やつはここから30里ほど先の幽玄地方にいるようだ。







カバ族の英知吽暁。ワイと共に行ってくれるか?







無論だ。阿暁







どうもこの体になって飛ぶ力は格段に上がったが、地上での移動がどうもクネクネでしっくりこんかったが、お前がおったら100人力やで。

ご先祖様カバ族の文明の利器大事に使わせていただきまっせ!!






そうだぞ。大事にありがたく使え。

あと毎日綺麗に手入れをしろ。







やかましわ!舌で舐めたろか!!









錆びそうだ。遠慮する。








よっしゃこのとんでもない力をいかんなく発揮できる時がきましたでー

待っててや寄生虫の親分さん



そう言って金剛太夫は空に飛び立ち一瞬で彼方へと消えていった。









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